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“第三の補聴器”、「みみ太郎」のなぞに迫る 『補聴器愛用会』が推薦する「みみ太郎」は不思議な魅力と謎を秘めています。聞かせる音の自然さ、脳に染み 透るような響き、盗聴器のような明瞭さ、音源とマイクの角度を問わず360度の音を拾う能力等々、使うほどに その虜になり、その謎に興味が湧き、補聴器や集音器等と比較しながらその実力と秘密を探ってみました。 結論としては、今回の試聴や実験で「みみ太郎」の持つ秘密や謎の全ては解明出来ませんでしたが、得られた 結果から「みみ太郎」は「補聴器とは異なり、又集音器とも異なる、“第三の補聴器”」と言っても良いと考えて います。 注:文中で使用している言葉は次の意味合いで用いています。 方向感覚:音源の位置と音が来る方向が分かると言う事 立体感覚:音源が移動する様が分かると言う事(どの辺りで物が落ち、どの辺りへ転がった) 注:集音範囲や効果、感覚は補聴器の場合は全て耳穴式補聴器についてです。 注:集音範囲の距離は、音は明瞭ではないが種々雑多な音をキャッチ出来る範囲を指しています。 ■集音の範囲について 補聴器 補聴器は性能設計の前提として音の方角を認識する事よりも、発生した音を逃さずキャッチするという点に重点を 置いて作られています。具体的には、集音する周波数の範囲は人の声の周波数(125/200〜5000/6000Hz) の範囲内とされ、又マイクが音を拾う為、その設定された範囲の音なら何でも(聞きたい音も、聞きたくない音も) 集音するという事になります。従って、アナログ、デジタル式補聴器を問わず、集音出来る範囲はその設計性能 範囲内の音となり、得られる方向と立体感覚には限度があります。 そこで、集音範囲を広げ、方向感を出す為に補聴器を両耳で装用する効果が謳われるわけですが、一つ落とし 穴があります。両耳装用により左右どちら側で音がするかという「方向感覚」は、片耳装用時に比べ大幅に向上 しますが、「立体感覚」は得られません。脳は左右の音の位置の違い(位相差)を音源からの距離を測る立体 感覚の物差しにしており、左右両方に同じ音源の同じ音が入らないと位置や向き等の立体感は分からないのです。 両耳装用した場合、個人差はありますが凡そ前方60度と後方60度辺りで左右の補聴器に均等に同じ音を集音 する範囲内でのみ立体的な向きと方向が分かるに過ぎません。言葉を替えれば、片側のみにある音源に対しては 両耳装用していても結果は、片耳装用と同じ効果しかないと言う事です。即ち、補聴器を両耳で使用しても立体 感覚は部分的にしか戻らず、どうしても“聴覚の死角”が生じます。 補聴器を両耳装用するという事は、実は、補聴器の集音範囲を広げているだけで、これにより左右の音の方向 感覚は飛躍的に向上しますが、擬似的に立体感覚が得られたように錯覚しているだけです。 注:補聴器の性能の観点からの説明であり、決して両耳装用の効果を否定するものではありません。 注:道路を歩く場合、“聴覚の死角”から思わぬ事故に巻き込まれることも考えられます。首を少し左右に振り、 “聴覚の死角”を無くしながら歩くことも保身の術と言えます。 「みみ太郎」 補聴器の場合は集音範囲に限界がありますが、報告者の知る限りでは、「みみ太郎」は集音範囲に限界を持た ない唯一の補聴機器です。 「みみ太郎」は本体内に人工的に作られた人の耳介を二つ持ち、その耳介の真中にマイクが埋め込まれた人工 耳介システムにより音を集音していますが、その集音範囲は、健聴者同様、360度全方位からの音を集め、 イヤホンを通し両耳から脳に直接伝える効果がある為、二重に方向感覚と立体感覚を捉えます。この音声情報が 脳に入る為、「みみ太郎」本体をどこに置いても音源との方向に関係なく、音の立体感覚が手にとるように把握 出来ます。 更に研究が必要ですが、「人工耳介の働き」としか云いようがないですが、メーカーでの開発段階の実験として、 一つの部屋に「みみ太郎」本体を置き、延長コードでイヤホンをつなげ、ドアを閉め切ったその隣の部屋で音を 聞いた健聴者が「まるで自分の耳で聞いているように隣の部屋の様子がわかって不気味だった」という実験報告 を記録しています。(「推薦します」コーナー、「補聴機器−みみ太郎」参照) 結論は集音範囲が本体の向きや位置に関係なく全天球と言ってもよい集音能力の為に、向きや方向によって 音が変わると言う事はなく、より立体的な音の把握能力の向上に寄与しています。 ■集音範囲の実験結果 音源をさえずる雀とし、そのさえずりがどう聞えるかと言う事で実験したデータです。聞こえる範囲の角度は凡その 数値です。巨大な無響室の中心部に被験者席を作り、360度回転移動の出来る音源を用意し、被験者の周囲に 巨大な全円周分度器を設置して測定するような施設でも作らない限り正確な測定は不可能で、今までの研究、 実験データに基づきまとめたものです。 みみ太郎 ・全天球(前後左右上下)、360度の音が集音出来る。 ・屋外では半径約50mまで明瞭感のある集音可能。耳が良ければ良いほど望遠鏡の倍率と同様で集音距離は のびる。 ・方向感覚、立体感覚共に360度に渡り完全に把握出来る。ヘリコプターの飛行の方向も把握出来る。 ・方向感覚、立体感覚共、上下方向の感覚の把握は身長の2〜3倍程度の範囲。 補聴器(デジタル) ・片耳装用の場合、側面の前方を基点に後方へ100度から120度。 ・屋外に於いては半径約5mが明瞭感のある集音の限界。雑音と音楽についてはこの限りではないが、5m以上 離れた音は明瞭感も音質も明らかに落ちてはいるが、集音はしている。 ・両耳装用の場合、方向感覚が、前方鼻部を中心基点とした100度と後頭部中心線を基点とした後方100度の 範囲で感じ取れる。上下方向の方向感覚は身長の高さ程度の範囲。木の高い位置でさえずる雀のさえずりは 認識可能であるが、方向感覚はかろうじて把握出来るものの立体感覚を捉えるのは難しい。 ・両耳装用での立体感覚の把握範囲は、前方鼻部を中心基点とした60度と後頭部中心線を基点とした60度が 限界で、上下方向も身長の高さ程度の範囲。 補聴器(アナログプログラマプル・Kアンプ) ・片耳装用の場合、側面の前方を基点に後方へ100度から120度。 ・屋外では、半径約10mが明瞭感のある集音限界。雑音と音楽については明瞭感は落ちるが10m以上先の 音も聞こえる。音質はデジタルよりは自然。指向性マイクを使っていないタイプの場合、正面に多少死角あり (正面角5〜10度位前方3m以上の範囲で死角あり/3m以内は死角無し)。 ・両耳装用の場合、方向感覚が、鼻部を中心基点とした前方120度と後頭部中心線を基点とした後方120度の 範囲で出る。上下方向については身長の2倍から3倍まで把握可能。雀がこの範囲の高さでさえずっている 場合は位置の把握が可能。ヘリコプターは無理であるが飛行機であれば飛行方向がある程度は把握可能。 ・両耳装用での立体感覚の把握範囲は鼻部を中心基点とした前方60度と後頭部中心線を基点とした後方60度が 限界で、上下方向については身長の2倍程度の範囲まで可能。 集音機(オムロンイヤーメイト等通販製品) ・片耳装用の場合、側面の中心線を基点に後方へ90度から100度位。 ・屋外に於いては、半径約3mが明瞭感のある集音限界。雑音と音楽についてはこの限りではないが、音質は 相当劣化する。前方に30度近い死角があるが、前方からの音源で1m程度の至近距離からの音や声であれば 聞き取りに支障はない。 ・両耳装用の場合、方向感覚が鼻部を中心基点とした前方100度と後頭部中心線を基点とした後方100度の 範囲で出るが、バランスが悪くふわふわとして不安定な感じである。 ・端的に言えば、周囲2、3mの範囲の音を単に大きくするだけの性能で、方向感覚は極至近距離の部分的な もので、立体感はゼロ。 ■周波数 人間が聞く事の出来る周波数は16〜20、000Hz程度と考えられていますが、実際には、人間の脳は、必要以上の 周波数の音を自動的に排除しているようです。 補聴機器別の凡その周波数域は次のようになります。 人間 16 〜 20、000Hz程度 みみ太郎 16 〜 20、000Hz程度 補聴器 100 〜 5、000Hz程度 集音機 100 〜 4、000Hz程度 デジタル補聴器の場合は可聴域の音も入れてはいますが、言語の明瞭さをより高める為に、会話で必要な周波数 帯域を強調する結果、音質が歪んで不自然になっています。集音機はリニアの特性でかなりうるさくなっています。 ■まとめ 最後に、上記の調査結果を表にまとめると次のようになります。(両耳装用時の比較)
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