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             骨伝導ヘッドフォン「フィルチューン」の総合評価







 骨伝導ヘッドフォン「フィルチューン」の評価にあたっては、主に室内空間と施設内空間(図書館や美術館、
映画館)、及び屋外空間(駅、公園)、それに交通機関を利用しての試聴チェックを行い、以下の報告として
まとめました。

尚、「フィルチューン」には
  @マイクを通して集音した周りの音声を聞かせる機能 と
  Aテレビやオーディオ機器へ直接接続し聞かせる機能
がありますが、今回の試聴では@を中心に行いました。

しかし、「フィルチューン」には専用マイク、又は使用マイクの指定はなく市販のマイクが自由に使えるように
なっていますが、今回の試聴ではシャープ製(MC-TS1)を使用しており、このマイクを通しての聞え具合の
報告となっています。当然のことながら聞こえ具合はマイクの性能、感度に大きく左右され、マイクを変えれば
聞こえ具合が異なることは論を待ちませんので冒頭で一言付しておきます。



■試聴器種
 メーカー名   フレェイ株式会社
 製品名     骨伝導ヘッドフォン 「フィルチューン」(BCHS-FT002)
             同梱


■試聴比較器種
 ・みみ太郎:SX−007
 ・みみ太郎:SX−008W
 ・アナログ補聴器(インビザKプロ)



■音源別の聞え
◇会話
 室内空間としては、6畳から10畳程度の空間で比較的静かであれば半径2m程度の会話には充分で
 あると評価出来ます。
 同様に屋内空間としては広い空間としての映画館(400席)やコンサートホール、学校の標準的な広さの
 教室に於いては、授業や講義といった聴き取りは音源となる教師や講師から近い1〜2m程の場所であれば、
 多少のざわつき程度であれば使用可能と考えます。音質は綺麗で問題ありませんが、雑音の制御機能の
 関係で広い場所や、ざわついた場所での聞き取りには使用者自身の聞き取り能力の訓練が必要でしょう。

◇テレビの音声
 テレビに直接接続した場合は、非常に綺麗な音であり「みみ太郎」や「アナログ補聴器」に勝る音質と
 言えます。スピーカーが鳴らす音をフィルチューンに取り付けたマイクを通して聞く場合は、マイクの性能や
 感度の問題、及び周りの他の雑音も拾う為に、特定の音だけを聞き分けるのは難しいか、慣れや訓練が
 必要と考えられます。

◇音楽
 CASIOのCDプレイヤー(CD-33C)によるラヴェルの「ボレロ」とジリオラ・チンクェッティの「雨」を試聴しました。

 いずれもオーディオ機器と直接コードで結んだ時の音は綺麗で明瞭感があり全く申し分のない音質で、
 「ボレロ」の段階を踏んで濃くなっていく変調の細部の情感と、「雨」の高音部のサビの部分がくっきりと
 非常に美しく脳まで聴こえます。
 マイクを通して聞く場合は従来の骨伝導補聴器ではマネの出来ない自然な音質と言えますが、雑音の
 セーブ回路等が無い為に、周りに生活音や雑音がある場合は聴き取りに難があるが、静かな環境では
 聞き取りには不自由せず、充分な音質であると考えられます。

◇美術館や図書館
 美術館や図書館等の閑静で広がりのある空間での聞き取りは小声であっても半径2m程度まで十分に
 聞き取れますが、付属マイクの性能の限界があり、みみ太郎のような盗聴器的な広い範囲の声や音を
 探るように聞くことには無理があります。

◇映画館
 映画館の場合は付属マイクの性能と音を自動的にセーブする機能が無い為と考えられるが、マイクから
 聞く音には音割れが感じられるものの、聞え具合は性能の良いヘッドホンで聞いている感じの音になり
 ます。骨伝導で確実に脳へ音情報が伝えられているので、マイクで音を拾う場合であっても明瞭度は
 十分あるものの音質に多少不満が生ずるというところです。

◇時計の歯車の音
 みみ太郎、補聴器のインビザKプロと同様、音が明瞭に脳に自然に入ります。時計から遠い位置であると
 音が小さくなるがぼやける事はありません。時計に近づけると歯車が一部磨耗してカチカチ音に変化が
 起きる部分のかなり細かい微妙な音の変化も分かります。

◇列車の振動
 鉄道敷地より約40m離れた場所での列車の通過時の振動と風切り音ですが、マイクの性能の問題を
 割り引いてもみみ太郎で聞いた場合の半分くらいの性能があり、電車の揺れ方や進行して来る方角、
 遠ざかっていく時の音の減衰していく周波数の波がかなりリアルに感じる事が出来る性能があります。
 従来の骨伝導補聴器の脳への不自然な甲高い鈍い音と比較すると、フィルチューンが空気を伝わってくる
 振動音を骨伝導に変換した時の音は、明瞭感があり、音として自然な聞こえになっています。

 本来人が自然に感じている骨伝導による列車の振動等の音は、脳では耳で聞く音と同じように処理されて
 います。従来型の骨伝導補聴器に於いても空気中を伝わってくる音同様の音質で聞こえなければならない
 はずなのに、性能の限界で不自然な音に脳で処理されて明瞭感はあっても不快な金属音になっていますが、
 
フィルチューンの空気を伝わってくる振動を骨伝導に変換するシステムは、人が本来自然に感じている
 骨伝導音と同じ音質に変換しているので、聞こえとしては明瞭感があり金属的でない自然な音になっています。

 以上の結果から、 フィルチューンで聞く地面を伝ってくる列車の振動の自然な音は、脳に骨伝導現象で
 伝わる時の音と同質の音にフィルチューンが変換していると結論出来ます。



■屋外での聞え
 屋外での性能チェックは、音質よりも集音性能と騒音環境に於ける聞き分けの具合のみをチェックしました。

◇バスや電車内
 バスと電車の車内に於ける聞き取り性能については、エンジン音や走行による騒音等会話の聞き取り
 にとってはかなりな雑音のある環境となるが、至近距離ないし半径1m程度の範囲の会話であれば
 十分使用できる性能です。十分な性能というのは音を脳へ伝えて聞くという性能には問題ないが、
 音を集めるマイクの形状と性能に問題があることは否めません。

◇電車の駅
 吹きさらしで、申し訳程度に屋根が設置されている開放空間タイプの駅としてJR白石駅(札幌)、首都圏
 では良く見かけるホームの外側を囲む防音壁があるタイプで屋根が線路近くまであり乗客が雨に濡れない
 ように配慮されている比較的空間に閉鎖性があるタイプの駅としてJR森林公園駅の二駅を利用して
 雑踏と音響効果と風切り音の影響をチェックしました。

 開放空間型ホームの場合は吹きさらしの空間が広く、音も飛びやすく風自体の吹き込みが乱気流に
 なるので音としては拡散しやすい環境である。集音は風切り音を相当拾う為に駅のホームでの使用は
 しない方が無難である。どうしても必要な場合の通常の会話は、半径1m以内でないと無理があります。

 閉鎖型ホームの場合は壁に囲まれている分、音が拡散せず反射もあるので聴き取りは比較的楽になります。
 但し、電車の起こす風切り音は空間を遮蔽している分強いものがあり、これは地下鉄の駅のホームよりは
 良好であるが、状況としては結構厳しいものがあります。又、風切り音は大変な状況である事には変わりが
 ありません。

 やはり駅のホームというのはどうであれやかましい環境である事には変わりなく、半径1mの範囲内の
 聴き取りは可能ですが、駅のホームでの使用はお勧め出来ません。

◇公園
 公園等の屋外空間の場合は音の拡散が立体的にある為に、遠距離からの音を引っ張る能力は落ちますが、
 車のエンジン音等の機械的な音は半径50mほど離れた場所からの音も集音出来ます。会話音ではなく
 身近な警報や危険の察知には充分な性能であると考えます。
 会話については難聴の状態やレベル、個人差もありますが、半径2m以内であれば十分なコミュニケーション
 がとれる性能であると判断出来ます。



■総合評価
◇難聴との関係
 後迷路難聴以外は全て効果があると考えられ、難聴のレベルとしては伝音性難聴と感音性難聴(老人性難聴)
 及び混合性難聴の相当なレベルまで対応可能な性能であると考えられます。やや騒がしい環境であっても音を
 直接に脳まで届ける性能は確かである為、通常の補聴器が使えない難聴者にも効果が期待できます。

◇聞え具合
 音が重過ぎず、デジタル補聴器のように変に歪んで甲高い音でもなく、アナログ補聴器の6000Hzの限界を
 補う自然の聞えに近い音質で聞いていて疲労しない標準的ながら明瞭感がある音質といえます。従来の
 骨伝導補聴器特有の不快な振動と金属的なジリジリとした音ではなく自然に近い聞えが得られます。

 しかし、音を拾うマイクの性能に大きく左右され、又不必要な音を制限する回路が無い為に、騒音状態では
 会話の聞き取りは困難な場面が多いと言えますが、静かな環境や多少音量的には大きくても発生する音の
 種類が少ない環境では補聴器具としての役目を十分果してくれます。

 試聴に使用したマイクでは、従来の補聴器のように会話の音域を強調するとか、盗み聞き、所謂ダンボ耳を
 するのは個人差もありますが非常に難しいでしょう。実際に札幌駅の雑踏や電車等の相当キツイ環境音に
 ついては、入力制限機能が無い為、耳を傷める恐れがあります。補聴器具として見た場合には単純に聞こえる
 だけでは駄目で、耳の保護とやはり音声をある程度強調する機能は必要だと考えます。

 フィルチューンは屋外での使用よりも屋内での使用向きであると考えられますが、もちろん屋外であっても、
 聞えに慣れていたり、トレーニングできている方であれば問題なく使用できます。

◇音楽鑑賞
 素晴らしい音質と言えます。テレビやオーディオ機器に直接接続した時の音質は、ブレがなく、脳にダイレクトに
 新鮮な音を提供出来ているという点ではデジタル、及びアナログ補聴器の性能を凌駕していると言えます。
 特に高音域の音が良く再生されておりくっきりした音で従来の骨伝導器具とは異なり、音楽も楽しめます。

◇その他
 やはり、ヘッドフォンですので両耳部分を挟む形になり長時間の使用は疲れると思います。

 ヘッドフォンとしては今までにない素晴らしい音であり、健聴、難聴にかかわらず使用できる為、価格にもより
 ますが、普及するものと考えます。又、骨伝導方式なので、以前から問題になっているウォークマンのヘッド
 フォンのシャカシャカ音で周囲に迷惑をかけず、耳をふさぐことも無い為、音響性外傷の危険も減り、事故防止
 にも役立ちます。

◇結論
 最後に、まとめてしては、骨伝導補聴器具の完成度の高い逸品という評価です。

 オーディオ機器や携帯電話等へ接続して聞く音はみみ太郎と変わらない程の音質と音域であり、これが
 骨伝導とは信じがたい逸品です。屋内、屋外共に聞こえの音質は完璧で、特にオーディオ関連機器と
 接続した場合の音質は綺麗で、明瞭感、透明感があり申し分のない性能です。

 敢えて言えば、骨伝導でここまでの製品はもう出ないとも言える“限界品”です。


 
以上、試聴報告です。


                                          『補聴器愛用会』
                                             副会長 奥平知明




製品紹介
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                                             <2008年 7月3日>



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