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           国民生活センターによる補聴器と集音器に関するレポート評価




                                            『補聴器愛用会』副会長
                                                  奥平知明




 昨年、国民生活センターは寄せられる消費者の声に基づき、通信販売で販売される補聴器や集音器の
問題点を明らかにする為、安全性や補聴効果についてテスト、及び調査を実施し、又同時に補聴器販売の
実態と問題点を把握する為に補聴器販売店に対しアンケート調査を実施した。

    テスト実施期間    2007年3月〜7月

その結果は30ページに渡るレポートとしてまとめられており、詳細はこちらを参照下さい。
        http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20070906_1.pdf





本レポートはこの国民生活センターが行った補聴器と集音器に関する商品テストや販売店に対する
実態調査と電池の性能テスト結果のレポートに関するコメント、及び評価である。

〔 国民生活センター補聴器レポートの概要 〕
 内容は次の通りである。
  ◎集音器と補聴器の項目に分けた上で、耳穴型と耳かけ型とポケット型の3タイプ、10社10種類の
   製品テストを行った。(いずれもフィッティングなしで使用する比較的安価な製品)
   ・機械的な性能テスト 周波数特性テスト
   ・モニター8名によるアンケートチェック 平均年齢74.5才
  ◎電池の寿命と補聴器への装填の難易さのチェック
  ◎薬事法との整合性チェック及び取扱説明書の表記のチェック
  ◎補聴器販売店へのアンケート調査
   ・認定補聴器技能者の有無
   ・聴力検査設備の有無 
   ・聴力検査室の有無
   ・語音明瞭度試験装置の有無
   ・オージオメーターの有無
   ・補聴器特性測定装置の有無
   ・装用効果測定装置の有無
   ・メンテナンス用補聴器クリーナーの有無
  ◎補聴器販売店へのアンケート調査
   ・サービス内容の確認
   ・医療機関との連携


レポート内容は大きく三つに分かれており、補聴器の性能テストに関するまとめ、補聴器販売店に対する
アンケート結果の分析とまとめ、以上の調査を踏まえた消費者へのアドバイスと行政機関に対する提言と
なっている。


先ず、補聴器性能テストについては機械的に周波数特性から補聴性能を理論だけに頼ってランクづけして
いる感があり、音量調整の制限機能のみに視点が偏り過ぎている嫌いがある。これは、国民生活センターに
寄せられる消費者のクレーム事例からある程度はやむを得ないにしても、性能的に優れた結果を出して
いる機種があるにもかかわらず、消費者へのアドバイスでは一部の機種の性能不足のみ取り上げて集音器
タイプの製品を完全に否定している。

次に、モニターによる性能テストであるが、全員高価な調整機能を持つ補聴器の使用者で、特定の音源を
利用して日常生活で使用中の補聴器の音と比較して単純に「よく聞き取れる」、「聞き取れる」、「半々くらい」、
「あまり聞き取れない」、「全く聞き取れない」の五段階で評価させている。


テスト方法についてであるが、聞き取り能力というのは個人によって差があるものであり、又同じ音源で
あっても難聴の種類(伝音性難聴・感音性難聴・混合性難聴・老人性難聴・後迷路難聴)によっても各個人の
音の聴こえ方は大きく異なる。従って、個々人の聞えの状態が不明、且つ各人の難聴の種類も程度(軽度・
中度・高度)も異なるモニターを集めてのテストでは適正な結果は期待出来ず、意味のあるものとはなり得ない。
モニターの耳(聞こえ)の状態、及び難聴の種類、難聴の程度を揃えてテストすべきである。

音源を利用しての聞き比べもテスト対象機種のボリュームを音源ごとに変化させるのではなく、一度無音の
場所で本人が一番聴きやすい人物の声で適切なボリュームに固定してから各種の音源でテスト対象機種の
音を聞かなければ聞えや機械的な性能の比較、及び評価は出来ない。

そして最大の問題は、聞こえの基準となる各人の調整された補聴器の音が一定ではないということである。
モニター8人全員に同じメーカーの同じ機種の調整型の補聴器を使用させ、音の聞こえを最適に調整(フイッ
ティング)し、音の明瞭性を全員に確認させ、個人による聞き取り能力の差を平均化した上でなけれぱ比較
テストの意味をなさない。


今回のモニターによるテストの結果は、ある人にとっては良かったが、他の人にとっては良くなかったという
ランダム(出任せ的)で異なる基準での主観的な評価にしかならない危険性を秘めている。

補聴器と集音器の機械的な周波数特性については機械の性能の良し悪しがグラフで明確に表されており
良いものは良い、悪いものは悪いと的確に判定されているが、上述の通り、補聴器と集音器のモニターテストは
残念ながら適切なものとは言いがたいものである。

電池の寿命のテストであるが、補聴器の種類や使用環境、湿度、気温にも左右されるという条件を無視して
機械的に測定しているだけで信憑性は認められず、又電池の装填のし易さテストを行っているが、特定の
10機種のみを対象としたモニターテストで対象機種が限定されており、この特定の対象機種に対して偏見を
助長するかのような印象を与えるものである。

取扱い説明書などの表示の調査については、消費者に対する充分な説明が必要であり、薬事法の規定も
重要であるから妥当なものであると言える。

補聴器販売店に対するアンケート調査について詳述すると、アンケートの項目は消費者による国民生活
センターへの補聴器販売店に対するクレーム事案を勘案して作成されたものであり、しごく妥当なアンケート
内容であり、かつて『補聴器愛用会』が調査した補聴器販売店のレベルの低劣さを証明する資料を補強する
結果となっている。


結論的に、調査の総括でもある消費者へのアドバイスでは今回テストを行った10機種のうち集音器タイプの
機種や調整機能無しの補聴器は使用しないようにと呼びかけている。そして、補聴器は補聴器販売店で
調整(フィッティング)を受けて購入するように呼びかける結論になっている。

しかしながら、アンケート調査において補聴器販売店に於ける設備の未整備状態や補聴器調整技術水準の
著しい不均衡とレベルの低さ、アフターケア体制の不備という事実を認識しているにもかかわらず、補聴器
販売店での購入を推奨するのは公的機関としては不見識との印象を与えるものである。


国民生活センターに寄せられるクレームにも補聴器の調整の不具合に関するものが多いが、調整とは何かを
当該センターの調査担当者が理解していないことを露呈していると感じさせるのは、行政機関に対する薬事法
等の指導や規制に過大な音量に対する安全確保の観点でのみ基準を設けよと要望していることがあげられる。

確かに過大な音量は耳の健康の安全確保には脅威である。しかし、音というものは単純に音量のボリュームが
大きければ聞こえるものではないということを知らない人が大多数であり、これは補聴器や集音器を製造する
メーカーにも音量が大きいことイコール良く聞こえると誤解している節があるが、誤りと言わざるを得ない。

音量を大きくすれば聞こえる難聴は伝音性難聴のみである。難聴者の95%以上を占める感音性難聴と
老人性難聴(両難聴共に聴覚に問題のある部位は異なるが同じ種類の聞こえ難さ)の二つの難聴は聞き
間違えの難聴で音量は必要ではなく、周波数の高い音が聞こえ辛い難聴である。

従って、国民生活センターが声を大きくしなくてはならないのは、消費者のクレーム内容を分析して音量よりも
周波数をもっと調整出来る補聴器の製造、販売をメーカーに要望し、他方、補聴器の調整技能者の養成に
関する提言もより具体的に音量の調整だけでなく周波数まで考えた音響工学の知識も併せ持つ認定補聴器
技能者を養成すべきであると踏み込んだ提言をなすべきと考える。


最後に、国民生活センターの補聴器に関するレポートの評価であるが、補聴器販売店調査については消費者や
関係機関に対するアドバイスや提言に公正さを欠き、不適切といえる表現があるのは残念であるが、現状の
補聴器販売店のお粗末さや補聴器販売の劣悪な実状、実態については余すところなく調査しており、消費者
からのクレーム事案のデータとも一致しており、現実の姿を示す価値ある内容となっている。

しかしながら、補聴器モニターテスト、及び消費者に対するアドバイスについては誤解を与えかねない総括で
あり、うがった見方をすると補聴器販売業界に遠慮もしくは集音器に対して販売妨害を助長するようにも受け
止められかねない結論でもある。

以上の原因と考えられるのは、国民生活センターの調査設備の脆弱さと調査担当者の耳と聴こえと補聴器とは
どのようなものであるのかという知識不足と思われるが、消費者の為に短期間で様々なジャンルの商品の
調査をしなくてはならないという事情もあり、やむを得ない面もあるが、いま少し補聴器とは法的にどんな製品で
あるかという定義だけではなく、現実の性能を電子工学と音響工学の面からもテストしていただき、耳と音と
聴こえとは何んなのか、更に「聴こえ」と「聞こえ」の違いも理解し、難聴の種類と程度も熟知した上で今後の
新たなモニターテストと調査の継続を希望して本レポートの結びとします。

                                      <平成20年 2月 8日>



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