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お願い 聞こえの不自由な人達にとって補聴器は聞こえを改善する大変役立つ補聴の器具ですが、残念ながらこれを 使用しても「普通(元)の聞こえ」に戻るわけではありません。聞こえ具合は人により、話される状況により異なり ますが、その聞こえが十分とは言えない場合が往々にしてあります。 しかし、どんな環境で、どんな方法で話してもらえればより良く聞き取れる、或いは逆に聞きづらいかは本人が 一番良く知っています。ですから、話す場所や座る位置、環境の確保、話し方に至るまで色々と注文が出る事と なりますが、これらは「あなたの話しをより良く聞く」為のもので、出来る限り、本人の希望や要望に沿うよう配慮や 協力をお願いします。それが、お互い、最も少ない負担で、最も話しやすく、最も話しが楽しめる方法だからです。 □話す場所や状況 ◇特別な訓練を受けなくても、顔の表情や口の動き、身振りからも沢山の話しの内容についての役立つ情報が 得られます。ですから、座わり方は次のような方法でお願いします。 ・一列横並び式の座り方は避け、お互い顔を見ながら話しが出来るように対面式で ・照明が必要な時や場所では、話し手の顔や口元が良く見える場所へ ・お互い、余り距離を離さないで(3m以内) ・来客を交え話す場合は、本人を来客の顔が見える最も近い場所に ・雑音のある場所では本人を雑音、騒音から最も離れた場所に ◇補聴器愛用者が最も苦手とする環境は周りの雑音や騒音です。可能な限り不要な音を軽減する、或いは 無くすようにして下さい。 ・話しは料理中やかたずけ中の台所ではなく居間で ・車の中のラジオや音楽のスイッチを切る ・BGMを低くするか止める ・外より音が入って来るようであれば窓や扉を閉める等 □話す時の心構え ◇「補聴器を使えば聞こえるようになる」という誤った、或は過度な期待は持たないで下さい。 補聴器で聞こえは向上しますが、例え最高の補聴器を使っても取り戻せる聞こえには限度があり、普通の (元の)聞こえには戻りません。ですから、「補聴器を使っているのに聞こえないの?」という類の発言は 止めて下さい。とても補聴器愛用者を傷つける言葉です。 ◇補聴器愛用者にとっては、内容を理解する前に、話しを聞く事そのものに通常以上の注意と集中力が求め られる大変に疲れる大仕事なのです。聞き手に疲れが見えるような場合や、話し合いが長引くようであれば 適度の休息時間を取るようにして下さい。そうすれば又、聞こえが戻ります。 ◇あなた(健聴者)が人に話し掛けられ、たまたま聞こえず「えっ、何?」と聞き返し、相手が、「いや、別に、 何でもないの」や「いいの、いいの、大した事じゃないから」、と繰り返して言ってもらえないとすると、 あなたはどう感じますか? 補聴器愛用者も聞き取れない時に「えっ、何?」と聞き返し、返って来る返事が「何でもないの」や「たいした 事じゃないからいいの」であればどう感じるでしょうか?言われた本人には精神的にこたえる言葉で、場合に よっては感情的にもなり得ます。これが繰り返されると努力して相手の話しを聞こうという姿勢が失われる ようになります。一端口にした言葉は、一度で通じなければ繰り返す、言葉の表現を換える、少し大きめの 声ではっきり話す、紙に書く、忙しければ「後でゆっくり話すから」等と会話の確保に努めて下さい。 ◇補聴器愛用者の多くは、聞こえない場合、聞き返す事に対し程度の差はあれ間違いなく躊躇します。 そして、聞き返す事は相手に悪く、失礼と思い、その結果、分からなくても聞こえたフリをする事になります。 反応が鈍い、ズレがあると感じたら、さりげなく確認するか、表現を換え、相手が理解するまで繰り返して 下さい。特に大切な内容の話しは、節目節目で確認しながら、話しを進めて下さい。 ◇話し方を変えても余り効果が見られない場合は、相手にもよりますがどうすれば聞こえが良くなるかをさりげ なく聞いて下さい。最初は相応しい環境でも、いつしか周りが騒々しくなっている場合もあり、又聞き疲れで 一息入れれば解消する場合もあります。 □補聴器愛用者への配慮 ◇話しは出来るだけ近づいて話して下さい。音声は距離が離れれば離れるほど弱く、小さくなります。 そして離れた別の部屋や、間仕切り等の裏側から話し掛けるのは止めて下さい。本人は聞く為にやりかけの ものも中断し、話し手の近くまで移動する必要が生じます。 ◇話し始める前に、先ず、相手があなたの話しを聞く準備が出来ているかどうかを必ず確かめて下さい。 この確認をせずに話し始めると、必ず先で話しを繰り返す事になります。 ◇特に大切な内容の話しを始める場合は、その環境(夕食時ならテーブルの準備が全て終わった状態) とそのタイミング(皆が着席し、ざわざわした感じが収まった後)を見計らって話して下さい。 ◇学校や職場で終日補聴器を使い、人と接した後では精神面や集中力の面で低下があり、この状態で 複雑な内容の話しをするのは好ましいものではありません。緊急事でなければ大切な内容の話しは帰宅 直後は避け、くつろいだ気分になった時に話し合うようにしましょう。又、緊急事の場合も、本人のこの 状態を理解、配慮した上で話し合うようにして下さい。 ◇補聴器愛用者との話しにはほんの少しの忍耐と寛容さで自然に接して下さい。驚くほど良い結果を もたらします。 □話し方、話すコツ ★出来るだけ向い合い、食べ物やガム等を噛みながら話さず、又口元が見えなくなるのでコーヒーカップを 口元で持ったまま話さないで下さい。専門的に訓練を受けていなくても、顔の表情や口の動き、仕草、 身振りからも話す内容についての様々な情報が得られます。 ★話す声の大きさと速さは大切な要素です。心持ちゆっくりと、そして口の中でモグモグと話すのではなく メリハリを付け、普通の声の大きさ、或いは少し大き目の声で話して下さい。 ★相手が聞こえないと思い、大声で怒鳴るように話さないで下さい。怒鳴るように話しても、音が歪むだけで、 かえって聞き取り辛くなります。 大声を出すのとハッキリ(明瞭に)話すのとは全く異なります。 ★必要に応じて間を取りながら話して下さい。取分け、話す内容に幾つかの話題が含まれる場合は、一つの 話題を終え、少し間を置き、そして次に進むようにして下さい。相手にとっては会話の流れについて行くのも 一仕事で、突然に、或は次から次へと話題を変えられるとついて行けません。このような場合は、往々に して最初の言葉(文章)を聞き漏らしやすく、その為にその後に続く内容の理解が難しくなります。話題を 変える場合には、「ところで、話しは変わるけれど、、、」や「別の話しになるけれど、、、」等必ず一言添え、 一呼吸置き、相手の聞く心構えを確かめた上で話し始めて下さい。 ♪ マサチューセッツ工科大学の研究で、状況によっては以上の★印の4点がしっかり守られれば、難聴者は 補聴器を着けなくても一定の聞こえが得られる事が確かめられています。 その他の注意点としては、 ◇身振り手振り、首を振る(肯定や否定の場合)、数字は指で表す、顔の表情等表現豊かに視覚へも訴え かけながら、真正面を見て話して下さい。 ◇質問や答えは一言二言の短い表現ではなく、ヒントとなる言葉を含め出来るだけ文章として表現して下さい。 内容の理解が高まります。 「これでよかった?」 → 「赤色のセーターを買っておいたけれど、これでよかった?」 ◇話そうとする内容の要旨や結論を先ず最初に伝え、相手がそれを理解した事を確認して下さい。 何の話しか分からず、起承転結型でだらだらと話されては唯でさえ普通の人以上に緊張し、神経を研ぎ 澄ませて聞いている者にはとても大きな負担となります。話される内容が分かった上で聞けば、理解力は 飛躍的に増え、負担は遥かに軽減されます。 ◇相手が十分に理解出来ていないような場合は、 @話した内容をゆっくり、はっきり繰り返す。 Aこれで通じなければ、同じ内容を別の表現で言い換える。これは効果的です。 (7時に出るの? → 19時に外出するの?) Bこれで不十分な場合はキーワードや要点を紙に書く。 Cこれで通じなければ文章化し、紙に書く。(少し忍耐が必要ですが、、、) ◇複数で話し合う場合、あちこちで別々の話しを同時にしないで下さい。この状態では、結局、どの話しにも ついていけない事になります。 少しばかりの気配りと配慮をお願いします。 『補聴器愛用会』 URL : http://shibuya.cool.ne.jp/tyothpa/ メール: kikoe06@yahoo.co.jp |