2016年11月25日 第34回日本森田療法学会  大田区産業プラザPiO
一般演題
    自助グループ活動での適切なアドバイスと指導の姿を考える(第二報)。
     〜森田ピアスクエアでの実践〜
               森田ピアスクエア 竹林耕司

(当日の発表原稿をまとめていないので、事前提出抄録を掲載します。)
自助グループでの個々の状況を考慮した適切なアドバイスは、大きな気づきを得ることも多く、有用で不可欠と言える。しかしながら、時として過度または不適切なアドバイスにより気持ちの萎縮や意欲の減退がうまれ、グループへの参加を止めてしまうこともある。行動主体のアドバイスにより生活場面で動ける様にはなっても、行動することのみが目的になり、日々の生き辛さから脱却できないケースも多く見られる。
 昨年は、アドバイスについて自助グループの成り立ちと役割の観点から報告した。今回は第二報として、活動現場からの実践報告を行う。
 自助グループの目指すところは、相互の受容体験を通じて、日常生活の中での気づきを得て自然な感情をキャッチしやすくなること、観念の世界で空回りする苦悩から脱却できることなどがある。更に自発的な力で動き出し、自然な流れに乗った自分らしい個性を活かした生活が送れることなどがある。このような観点で考えると、自助グループで本来必要なアドバイスは、あくまでも自発的な動きに繋がっていくものであり、症状克服のための行動のみを指示するものや教育的な指導ではない。また先輩から一方的に行うべきものでもない。事実本位の行動は、本来は自らの生の欲望に乗って動くことが重要であり、行動指示のみを主体とするマニュアル的なアドバイスでそこに至ることは難しい。また、アドバイスをする側の個別体験をそのまま押し付けず、個々の状況、相手の特性、経験、能力などを考慮し、日常生活に即した柔軟なものであることも重要である。とは言っても、実際にはまだ自分の欲望もやりたいことも見えてない場合も多く、相互に気づきを促すような雰囲気作りや、日常生活の中で感じ取った事を話し合い、それが気づきのきっかけになるような進め方が必要である。
 森田ピアスクエアの交流会では、受容共感の雰囲気の中で、普段見過ごしていたり、人に言えない様な感情体験を自由に出し合うことで、日常生活での気づきを得やすい環境を作っている。そこでは、指導的なアドバイスは行わず、自然な感情に蓋をしたり価値評価せず、そのまま受け入れられるようになることを通じて、自覚に繋がることを目指している。原著の読書会では、文章解釈や言葉の理解を促す解説的な指導を避け、直感的な感想や実際の具体的な体験にもとづく話し合いで、観念の空回りから実際の世界に向けて出て行けるような工夫をしている。
                                                 以上