2011年10月 第29回日本森田療法学会 横浜市教育会館
一般演題
  グループワークでの相互受容と傾聴を通して、森田の「純な心」を体感する。
                     森田ピアスクエア 竹林耕司

(当日の発表原稿をまとめていないので、事前提出抄録を掲載します。)
神経質の症状克服を目指した目的本位の行動で、縮小した生活が回復するケースは多いと思います。
しかしながら、表面的な症状は軽くなっても、感情が流れずに、漠然とした不全感や自己否定感を引きりながら、多くの方が生き辛い生活を送っています。
その様な実態から、自助活動の場にありがちな、型にはまった行動のみの指導的アドバイスには限界があるのではないかと考えています。
行動至上のアドバイスで精神交互作用は断ち切れても、それだけでは事実をとらえる視点が抜けがちで、根底にある思想の矛盾は残ったままです。
そして、本人が抱えるその矛盾の中で、相変わらず葛藤は続きます。
強いかくあるべしで築き上げた厳しい価値観が、自分の素直な感情を裁き、長年の中で純な心に蓋をする癖が出来てしまっています。
その結果、ちょっとした感情に対してもあってはならないという強い思いが起き、気持ちの固着や自己否定感が生まれます。
そのため、仮に行動できたとしても不全感や劣等感を引きずります。
森田ピアスクエアでは、昨年度既報の通り、相互受容をベースに自由に話し合える場と森田学習を併せ持つ、複合型グループワークを行っています。
ここでは、かくあるべしの元である思想の矛盾に着目し、感情に善し悪しの評価をせずそのまま感じ取れるように、徹底した受容と聴く姿勢を基本としていま す。
長年自分でも否定してきた種々の感情を、傾聴をベースとした場でお互いに出し合うことで、感情に対する価値判断や罪悪感が徐々に減ってきます。
そして何を言っても受け入れられるという体験を積むことで、どんな感情を持っても構わないという実感が生まれます。
このように否定の束縛から自由になることで、感情も単なる心の事実であり、ただそこに在るだけだという感覚が生まれます。
そこから純な心の体験ができ、ひいてはあるがままの体得に繋がります。
素直な感情をそのまま見つめ受け入れることで、自覚と共に思想の矛盾が解消され、行動の拡大だけに留まることなく、根底から人生観が変わるきっかけになり ます。
この過程では、併催の森田学習会との相乗効果も大きな役割を果たしています。
今回は、心のかくあるべしから自由になり、そこから純な心を体感してきた事例や、グループワークの具体的な進め方について紹介します。
以上